ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

ペトロブラスが2015年の見通しを発表

金曜日にペトロブラスが今期2015年の投資計画について、投資を抑制し、ペトロブラスからの資金流失を抑える計画を実施していくと伝えました。また、新たな資金調達を必要としない範囲内での投資を進めていくとも述べています。

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業界関係者によると、投資計画の見直し、製品価格の見直し、現在オペレーション中のコスト見直しの3本柱で資金流失の抑制を進めているとのことです。ペトロブラスもまた、現在汚職問題の捜査が続いているものの、第3四半期決算の公表準備とともに、既存オペレーションの契約の見直しやオペレーションに付随するサービス契約を個別に精査していると伝えています。

 

ブラジルでは過去ペトロブラスの投資や支出により 、多くの関連産業企業に恩恵をもたらし、雇用を拡大してきた事実があります。そのため、ペトロブラスの投資や経費抑制は必然的に、 ブラジル石油関連産業全体が停滞することに繋がると言えます。今後の原油価格次第ですが、投資抑制が1年に留まらず、長期化する場合は産業全体の弱体化に連鎖する恐れも指摘されています。

政策金利が12.25%へ上昇

ブラジル中央銀行の金融政策委員会(Copom)は政策金利(Selic)を12.25%へ引き上げる決定を下し、金利は2011年以来の高い水準となりました。

 

市場関係者からもほぼ想定通りの利上げであったため、特にサプライズはありませんでした。しかしながら、中央銀行関係者が「今回の決定はマクロ経済とインフレ見込みを勘案し実施された」とコメントしているように、0.25ポイントではなく、0.5ポイント引き上げたことは、 特に2016年にインフレ率を4.5%程度に抑えることを至上命題としている中央銀行のインフレに対する姿勢を明らかにしたと言えます。

冷房機器関連の販売が絶好調

今夏の平均気温(今、ブラジルは真夏です)の上昇は住民にとって寝苦しい夜が増える一方、エアコン・扇風機メーカーにとってはうれしい悲鳴のようです。経済紙Valorは、冷房機器関連の販売が前年比10%から最大で20%プラスになるとの見通しを発表しています。

 

昨年の夏が非常に暑かった為、今年も続けて猛暑になるとはだれも想像していなかったと、冷房機器販売店のToshio Murakamiは伝えています。会社によると冷房機器関連の販売は前年比10〜12%プラスと予想しているとのことですが、実販売はそれ以上に推移しているとのことです。そのため最も人気のある、簡素で安価なエアコンシリーズは既に品薄状態になっているとのことです。ブラジル人は車、オフィス、スーパー等でエアコンに慣れてしまっているので、その快適さを家で求めるようになるのは必然であるとも先ほどのMurakamiは語っています。

 

ブラジル空調製品販売大手のMondialは連日フル回転で販売しており、店舗在庫はほぼゼロの状態が続いているそうです。社長のGiovanni Cardosoは商品が店舗に到着した瞬間に売り切れてしまうと伝えています。今後もこの暑さが続けば中央配送センターの在庫も早晩なくなるだろうと伝えています。また、総合ス−パー大手のカルフールは商品の納入を早めるようメーカーに働きかけをしているとも言われています。

 

世界的に空調需要は堅調と言われていますが、ブラジルでも同様のようです。ブラジルで人気のある商品は安価で静かなモデルですが、今夏は特にサンパウロ都市圏で低価格でない、日本円で10万円前後の高給ラインも売れ行きが好調と伝えられています。

 

また、別の調査ですが、ブラジル国内でGoogleを経由して“エアコン”と検索された回数が、今月、過去11年で最高を記録したとのことですので、まさに今、消費者の関心がエアコンに向いている事が伺えます。

 

メーカー関係者によると、昨年末から続いているレアル安(輸入商品高になる可能性)の影響は未だ限定的で、現在はメーカー努力によって価格上昇が延期されている状態とのことですが、今後は他の物価上昇とあわせてエアコン価格も上昇する可能性があります。

 

サンパウロは標高が高いため緯度の割に涼しく、一般的な住宅にはエアコン設備がありませんが、今年の暑さは堪え難く、パウリスタもエアコン購入に走っているようです。

全国学力試験の結果発表

日本でも先週末に大学入試センター試験が実施されていたようですが、ブラジルの2014年の中等教育全国学力検定試験(Enem: Exame Nacional do Ensino Medio)の結果が開示されましたので内容を見てみたいと思います。

 

ブラジルの教育制度はざっくり言うと、日本の小学校6年間と中学校3年間にあたる教育を一括で基礎教育として8年間提供し、その後日本の高校3年間にあたる教育を中等教育として同じく3年間提供しています。そのため、今回の中等教育全国学力検定試験(Enem)というのはまさに、日本で言う大学入試センター試験のようなものなのです。ブラジルは基礎学力の底上げに力を入れており、それによって中等教育のレベルの上昇も期待しています。そして、毎年のEnemの結果はその教育改革の成果を計る一つの指標と言われています。

 

しかしながら、2013年の結果が満点481人、ゼロ点10万6千742人だったのに対して、2014年は満点250人、ゼロ点52万9千374人どちらも大幅に悪化しました。様々な要因があるでしょうが今後結果分析が出てくると思いますので改めて紹介したいと思います。

 

また、毎年のことではありますが、Enemで高得点を取るのは決まって私立中等教育機関の学生であり、良い教育を受ける為には、お金をかけて私立に入れなければ行けないというのがブラジルの現実のようです。基礎教育期間も含めて、ブラジルの公立のレベルはまだまだ低いのが実情で、公立レベルの引き上げが今後のブラジル教育全体の底上げには重要になると思います。

原油安ショックとプレソルト開発

昨年後半から始まった原油価格の下落は、現在も下げ止まる様子を見せていません。2011年には1バレル100〜120ドルで推移していたブレンドオイルは、12月の2週目には40%超のマイナスとなる、1バレル60ドルまで下落しました。そして、今年に入り1バレル45ドルまで下落しています。そこで今回は、原油価格の下落とブラジルのプレソルト開発の関係について見てみたいと思います。

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ブラジルでは今回の原油価格の下落によって、ペトロブラスによるプレソルト開発への影響を懸念する声が経済界から上がっています(もちろんペトロブラス内部の汚職問題も不安に拍車をかける格好となっています)。なぜなら、ペトロブラスは2014〜2018年の4年間で2,204億ドルを原油関連設備に投資する計画で、2013から2020年にかけて1日当りの原油生産量を190万バレルから420万バレルまで引き上げようとしており、その投資の大部分を占めるのがプレソルト開発関連投資だからです。

 

確かに、非常に短期的な見方ですが原油価格の急激な下落が、ペトロブラスとって一部好材料になり得るとの指摘もあります。それは、原油価格が高騰していた時に、インフレ対策として導入された政府による石油製品に対する価格介入が是正される可能性がある為です(海外の高い原油を買う一方、政府が補助金を出して国内市場にガソリンを安く供給していた)。価格介入の結果、政府は2011〜2014年で累積594億レアルの赤字を背負っていますが、現在ブラジル市場のガソリン価格より、国際市場価格が低い状態が続いているので、 価格介入を継続する必要性がなくなり、仮に終了すれば、ペトロブラスが国際市場から原油製品を調達し、国内市場で販売する事で収入確保につなげられる見方があるからです(ペトロブラスの主要輸出品目であるディーゼルオイルに対する輸出関税が減税されることも多少プラスに働くと言われています)。

 

しかし、大方の観測は、仮に現在の原油価格レベルが今後数年間続く状況となれば、ペトロブラスの立場は危うくなるというものです。なぜなら、国際原油価格がプレソルトからの原油生産コストを下回り油田が赤字に陥るだけでなく、ペトロブラスが現在生産している原油バレル当りの収益性が大幅に低下してしまうからです。

 

まず、プレソルトの原油生産コストですが、これは以前ブログでも紹介したように、技術的な課題やロジスティクスの問題があるにもかかわらず、比較的低く抑えられていると言われています。業界関係者によると、もっとも生産性が高いエリアで1バレル40〜45ドル程度がプレソルト拡張の損益分岐点と言われています。また、1バレル60ドル以上に価格が維持されれば、ペトロブラスのエンジニア能力が向上していることも寄与し、比較的原油生産量の多い、日量2〜3千バレル生産出来る油田であれば、損益分岐点を越えることができると言われています。例えば、2010年に比べて油田採掘に掛かる平均日数は約60日減少しているというデータがあります。採掘船のリース費用は1日50万ドル程度と言われている為、ペトロブラスのエンジニアリング能力向上が採掘コスト削減につながっていることになります。

 

しかし、現在計画中の投資をすべて実行するためには、現在想定されるペトロブラスの将来フリーキャッシュフローのみでは到底賄えず、借入を実施する必要がありますが、ペトロブラスは既に既存油田の開発資金として2,400億レアル以上の債務を抱えています。これは原油高騰時期に比較的低金利の借入で、資金調達を進めてきた結果で、2011から2014年迄で純債務/EBITDA比率は1.03から3.94に上昇しています。欧米のオイルメジャーや資源メジャーはリスクに備えて自己資本比率を非常に高く保っており、手元資金で開発するスタンスを崩していませんでしたが、ペトロブラスは経営に政府が介入して以降、急速な開発推進の為に負債比率が(他の資源メジャーと比べ)大幅に高まっていました。そのため、現在の原油価格水準でペトロブラスが追加借入を実施するのは困難な状況と言われています。

 

そこでペトロブラスは今年、追加投資を進めるより先ず、その債務削減を進める可能性があると言われていますが、それも中々難しい道になると予想されています。なぜなら、債務の返済計画は現在の投資計画の着実な進捗を前提にスケジューリングされていますが、ペトロブラスの見通しは為替が昨年で1ドル2.23レアル前提、原油価格が2015〜2017年で1バレル100ドル、2018〜2030年で1バレル95ドルを想定して作られている為です。為替変動によるレアル安は約1,000億ドルのドルオペレーションを実施しているペトロブラスにとって即債務の増加につながりますし、原油価格の下落は将来のキャッシュフローを低下させ、債務返済能力の悪化を意味します。またこれもこのブログでも以前伝えたように、ペトロブラスの昨年の生産量は初期の見通しの2013年比7.5%プラスには及ばす、5.5〜6.0%プラス程度と言われていることから、ペトロブラスの楽観的な原油価格前提、為替前提、 生産見通しに基づいた事業計画さらには、債務返済スケジュールは既に破綻していると考えられている為です。

 

そのため、今後仮に現在計画中のペトロブラスが参加するプレソルト開発に支障をきたすようなことがあれば、国際競争入札によりペトロブラス持分の一部が、新たな外資パートナーに分配され、ペトロブラスの負担を軽くする方法が取られるかもしれません。一方で、現法律下ではプレソルトに関する開発にはペトロブラスが少なくとも30%以上のシェアをとらなければならないことになっているので、今後その法律規制が撤廃されなければ数年間は新規鉱区の入札がおこなわれない可能性もあります(すなわち、ペトロブラスの持分のシェアダウンは30%超を持つ部分でしか行われないという事でもあります)。

 

国際相場における原油価格に関してはペトロブラスがコントロールできるものではありません。そのため、ペトロブラスは価格に目をむけるより、先ず自助努力として、汚職問題を早期に解決し、経営を安定させるとともに、大きくなり過ぎた企業体をスリム化し、筋肉質な企業に成り代わることが求められます。しかし、ブラジル政府が過半数を持つ企業となってしまった今、ことあるごとに政府から介入を受けることは目に見えているので、構造改革も一筋縄ではいかない中であっても、早期に国際社会からの信用を取り戻す必要があると感じています。

ブラジルサッカーチームの市場価値ランキング

2014年のブラジルサッカーチームの市場価値ランキングがコンサルティング会社のPluriから発表されましたのでランキング形式で上位5チームを紹介したいと思います(円/レアル=45円で計算)。

 

 

5位 インテルナショナル

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南部リオグランジドスル州の州都ポルトアレグレを本拠地とする古豪です。

昨年のブラジル全国選手権(日本のJリーグに相当)3位のチームです。

市場価格は76億円で、前年比7%マイナスで順位も昨年の3位から後退しています。

 

4位 コリンチャンス

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サンパウロを本拠地とする古豪で、昨年のブラジル全国選手権4位のチームです。

熱狂的なファンが有名でスタジアムに見に行くのがためらわれますが、ブラジル国内でも人気のあるチームです。セルジオ越後さんも所属していたそうです。

市場価格は79億円で、前年比15%マイナスでインテルナショナル同様順位も昨年の2位から後退しています。

 

3位 アトレティコミネイロ

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ミナスジェライス州のベロリゾンチを本拠地とするチームで通称ガロ。

昨年のブラジル全国選手権は5位でしたが、ブラジルカップ(日本の天皇杯に相当)は優勝し、初タイトルを獲得しました。昨年中盤まで、ロナウジーニョがプレーしていた(7月に退団)チームであり、現在は元セレッソ大阪監督のレヴィークルピ氏が率いているチームでもあります。

市場価格は88億円で、前年比7%プラスで 昨年のランキング5位から順位も上げています。

 

2位 サンパウロ

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名前の通りサンパウロを本拠地とするチーム。

昨年は日本でもよく知られているブラジル代表のカカがプレーしました(今期はオーランド・シティ)。カカは欧州チームへ移籍前もサンパウロに所属していたので愛着あるクラブなのだと思います。カカ以外にも、一時期シャルケに在籍し、内田のチームメイトであったミシェル・バストスも在籍しています。昨年のブラジル全国選手権準優勝チーム。

市場価格は106億円で、前年比26%プラス、ランキングも昨年の4位から上げています。

 

1位 クルゼイロ

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3位のアトレティコミネイロと同様ミナスジェライスのベロリゾンチを本拠地とするチームで、2013年、2014年のブラジル全国選手権2連覇、昨年のブラジルカップ準優勝の、今ブラジルでもっとも強いチームの一つです。

市場価格は123億円で前年比27%プラス、昨年も1位でしたので市場価値でも2連覇を達成しています。

 

こうしてみると、結果を残していたチームが当然ながら市場から高い評価を受ける結果となりました。ブラジルではサッカー関連ビジネスは一大産業ではあるのですが、その価値を上げるにはやはり強いチーム、選手の育成が欠かせないということを示していると思います。

ペトロブラスの決算発表時期は?

昨日夜ペトロブラス内で経営審議会があり、第3四半期決算の発表時期について協議が行われ、1月27日を目処に発表することになったとペトロブラス広報が伝えています。

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 この発表を好材料とし、 本日のペトロブラス普通株は8.12%プラスの9.19レアル、優先株は6.41%プラスの9.31レアルで終えています。一方、ニューヨーク証券取引所のADRはそれほど上がらず、普通株で2.2%プラスの6.98ドル、優先株で0.72%プラスの7.05ドルに留まっています。

コーヒー豆輸出が過去最高を記録

2014年のブラジルコーヒー豆輸出量が発表され、前年比14.7%増の3千6百32万個(60kgバック相当)となり過去最高を記録しました。

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ブラジルコーヒー豆の最大輸入国はアメリカで、輸出全体の20%を占めています。また、2位のドイツは全体の19%を占め直ぐ後を追っている状況です。地域別に見ると、ヨーロッパの輸入量が昨年17%増加し、全体の55%を占め、最大のブラジルコーヒー豆輸入地域となりました。ヨーロッパに続き、北アメリカが全体の24%、アジアが16%を占めていました。

 

昨年度のコーヒー豆輸出によりブラジルは前年比26%プラスの65.8億ドルの収入があり、そのうち81%をアラビア種が占めているとのことです。

 

A Companhia Nacional de Abastecimento (Conab) によると2015年は4千4百〜4 千6百万個(60kgバック相当) を見込んでおり、さらに輸出が拡大する見込みです。

大雨によりサンパウロ市の80万世帯が停電

月曜の夜にサンパウロ市を襲った大雨の影響で、80万世帯が停電となり、この夏一番の大雨被害になっているそうです。

 

被害が大きかった地域は、サンパウロ市の西エリアと南エリア、BairroではBrooklin, Campo Belo, Moema, Ibirapuera, Morumbi そしてButantãです。日本人が多く住んでいるエリアではありませんが、一部の家庭ではやはり停電になっていたようです。停電以外では昨日迄に、強風により58本の倒木被害が確認されており、内1本は車に直撃(怪我人なし)、南部の2河川が大雨により氾濫等が合わせ報告されています。

12月の炭酸飲料生産量は下落

Sicobeの調査によると2014年12月の炭酸飲料生産は15.4億リッターに達し、前年同期比2.4%マイナスの結果となりました。

 

ブラジルは南半球に位置しているので、日本と季節が逆で飲料業界は南半球の夏に当たる10〜12月にかけて生産増強を進めます。そのため12月の生産量も前月比4.2%プラスとなっています。今回、月別でみると前年同期比マイナスの結果となりましたが、10〜12月期では前年同期比3.3%プラスの44.8億リッターとなっているので、在庫調整が一部進んだ結果ではないかと伝えられています。ちなみに、2014年年間の炭酸飲料生産は157.38億リッターとなっています。