ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

ジョージソロスファンドがペトロブラス株の60%を手放す

ジョージソロスファンドは第3四半期中に、所有していたペトロブラス株の60%を手放していたことが明らかにしました。

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証券取引所へ提出された書類によると、ファンドが保有するNY証券取引所で取引されているペトロブラスADRが60%減っていることが記載されています。手放した株はペトロブラス全体の0.04%に当たる1千470万ドルに相当します。ソロスファンドがADRを売却した昨年の9〜12月はまさに、連邦警察によるラバジャット作戦(汚職事件大規模捜査)によって汚職スキームが明らかになった時期でした。そして、その後ペトロブラスに起こったことは、第3四半期決算の開示の遅れ、そして現在まで未監査の状態が続いていることから、ソロスファンド先見性が確りとしていたと言うべきだと思います。

 

また、ソロスファンドはブラジルの航空機メーカーエンブラエル、通信会社のTIMのADRも合わせて売却しています。

ウジミナスの決算発表が延期

先週の金曜日にウジミナスの経営審議会にて第4四半期末決算内容が否決されました。それに伴い、2014年の配当決議に関する資料も公表されない事態になっています。

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ウジミナスはご存知の通り、ブラジルに拠点を置く鉄鋼メーカーで、日本の新日鐵住金とアルゼンチンのテルニウムを主要株主に持っています。ウジミナスの経営を巡って、この新日鐵住金とテルニウム側で ズレが生じているのが今回の否決の原因です。

 

元々、昨年にウジミナスの役員報酬で不正受取りがあったとして、社長と役員2名を新日鐵住金側が解任しましたが、それに対して、テルニウムが反発していました。解任された社長・役員はすべてテルニウム側の指名、新社長・役員はすべて日本グループ側とされていることからもその対立が際立っています。テルニウムはウジミナスがブラジルのナショナル製鉄によって買収の危機に晒されていた時にホワイトナイト的に経営参画しています。新日鐵住金としては、ブラジルの同業鉄鋼メーカーにウジミナス経営に対し口を出されるより、外資のテルニウムの方がまだマシという事だったと思います。しかしながら、この両グループの経営に関する権利が拮抗しているだけに、意見の相違があった場合に物事が進まないということに陥っているようです。新日鐵住金側は正当性を主張していますが、意見の統一には時間がかかりそうです。

 

今回の決算否決も当該事案に関連し、役員に対する給与・賞与・福利厚生等で意見の相違があったからと伝えられています。

 

証券取引委員会に提出された書類によると経営審議会メンバーの一人であり独立弁護人は繰延税金資産の取崩可能性の検討につき反対票を投じたが、賛成多数で可決されたとしています。また、今回否決された内容ですが、監査法人のErnst&Youngからの指摘は特になかったようです。

 

引続き事態を見守りたいと思います。

リオのカーニバルを楽しむ為に

いよいよ今週末からカーニバル期間に突入します。特にリオデジャネイロのカーニバルは世界的にも有名で、日本からもツアー旅行等で観戦される方もいると思います。今日はいつもと違いますが、リオのカーニバルを観戦される方に少しだけ気をつけてほしいことをお伝えします。

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と言っても注意してもらいたい事は1点だけ、ずばり身の安全です。 

なんだ、そんな事かと思ってしまうかもしれませんが、実際多くの方が過去被害に遭っています。そのようなことが起こると、旅行そのもの、ブラジル自体が嫌いになってしまう可能性があるので、最低限下記の事を注意して、楽しんでほしいと思います。

 

まず到着した空港です。当たり前ですが、自分の荷物から目を離さないでください。昨年のブラジルW杯の時も邦人の方が空港で被害に遭われていますが、ちょっとだから大丈夫、ということは絶対にないので、常に貴重品を身につける、目を配ることを怠らないでください。特に空港は誰でも入れるエリアなので窃盗をする人も沢山います。

 

次に街中の移動です。ツアー旅行の方は基本的に旅行会社手配のミニバスがあると思うので、大丈夫だと思いますが、個人で旅行される方はなるべくタクシー利用をおすすめします。この時期はタクシー料金は高騰しますが、1,000円程度で安全が買えると思えば安いのではないでしょうか。

 

犯罪に遭うのは90%以上が移動時ですので、移動する場合は最低限の貴重品だけを身につけるようにしてください。ただし、ブラジルは身分証明書(イデンチダージ)社会なので、パスポートを携行しないと入場できない場所もありますので、添乗員の方と相談して判断してください。 

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カーニバルは夜〜朝までの行事でその間、街のいたるところで夜通しイベントが開催されます。サンボドローモ〜ホテル間は旅行会社手配の移動手段があると思いますが、それ以外で出かける際は、警戒度MAXで行動してください。

 

残念ながらブラジルは、日本に比べ犯罪が多いのが事実です。特にカーニバル期間は観光客が多く訪れるので、それを狙った犯罪も多く発生します。そのため、上記のような注意をしていても、被害に遭う可能性があります。そのため、下記のことにも留意してください。

複数人に囲まれたら、絶対に抵抗せず、言う事を聞いてください。ブラジルでは銃が多く出回っているので、(本物かどうかは不明ですが)相手はそれを見せつけてきます。その際は、相手が何かを要求してくると思うので、それをゆっくり(急な動きはせずに)渡してください。多くの下記の3つのうちいずれかです。

セルラー(celular)もしくはアパレーリョ(aparelho)→ 携帯電話 

カルテイラ(carteira)→ 財布

ヘロージオ(relógio)→ 腕時計

 

以上、物騒な話ばかりしましたが、確りと注意すれば遭遇することもないと思いますので、日本にいるより少し警戒度を高めて過ごしてもらえば、楽しい旅行になるはずです。 

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最後にちょっとだけ、よりカーニバルを楽しむポイントをお伝えします。

日本からの旅行ですと、メインイベントである、日曜日もしくは月曜日のグルーポエスペシャル(所謂一軍)のエスコーラを見ると思いますが、各エスコーラが使用するサンバミュージックがすでに公開されています。音楽を知っていると(ポルトガル語が分かる方は歌えればなおよし)、リズムにも乗りやすいので、残り時間が少ないですが、自分が見る日程にどのエスコーラが参加するか確認してサンバを覚えるとより楽しめるはずです(下のリンクはグルーポエスペシャルのすべてのエスコーラが入っています)。


SAMBA ENREDO ESPECIAL 2015 (CD COMPLETO) - YouTube

 

Boa viagem !

ジルマ大統領の支持率が急落

調査会社Datafolhaによると、ジルマ大統領の支持率が急落しているとのことです。選挙直後の12月には、42%の人がジルマ氏を良い/最高と評価していたにも関わらず、2月には23%迄落ち込む結果となっています。汚職事件や相次ぐ(大統領選の時には公約していなかった)財政緊縮策の導入により、国民の不満が高まっている事が伺えます。

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逆に悪い/最悪との回答は24%から44%へ増加しており、 大統領の不支持率としては1999年にカルドーソ大統領時代の46%の次ぐ、最低の数字となっています。調査によると、全体の77%の人はジルマ氏がペトロブラスの汚職に関し、以前から認識していたと考えているようです。さらに、77%の内、52%の人は、ジルマ氏が汚職を知っていてなお何もしなかったと考えており、残りの25%の人は知ってはいたものの、なにも出来なかったと考えているようです。

 

一方で、60%の人が大統領選のキャンペーン中にジルマ氏が嘘をついていたと感じており、そのうち46%が真実より嘘をついていた割合が多いと考えており、14%は全くの嘘だったと感じていると伝えています。

 

ペトロブラス関連については連日お伝えしているように、今回グラッサ・フォスター氏が辞任した事で、汚職事件捜査が政治家まで及ぶ可能性がありますし、元ペトロブラス経営審議会議長だったジルマ氏もなんらかの取引に関与していると思われるのは、当然の事と思います。また、現在進めている増税や緊縮策というのは大統領選の時に、まさに相手側候補者(アエシオ氏)が伝えていたことであり、大統領選のキャンペーンで貧困層への支援の拡充を歌っておきながら、現在は全く逆の事をしている為(ブラジル経済情勢的には当然なのですが)、反発が大きいのではないかと推測されます。

 

1月のバイク生産量が低下

Abraciclo(バイク協会)によると、1月のバイクセクターの生産量は前年同月比16.7%マイナスとなったとのことです。昨年の12月と比較すると、12月は休日が多い事もあり、43.9%プラスとなりました(12月に発表の2015年予想では、販売は1%増、製造は2%増のそれぞれプラスを見込んでいました)。

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1月の総生産量は12万2千台で、工場から販売店迄の在庫は10万4千台とされており、前年同期比0.4%増加、12月比8.7%減少しています。Abracicloの代表であるMarcos Fermanian氏によると、1月は各バイクメーカーが工場や販売店の在庫調整を進めているとのことです。現在、銀行の自動車・バイク購入の為の貸し付けが焦げ付いた時に、銀行が優先的に車両を抑えることができる法律を改正中ですので、仮に法律が制定されれば、銀行車両に対する貸し出し枠が広がり、消費が拡大する事も期待出来ます。

 

なお輸出も厳しく、隣国アルゼンチンの経済危機により、12月の輸出量は2万2千台と前年比73.8%に落ち込んでいます。

ペトロブラスのグラッサ・フォスター社長辞任

ペトロブラスは水曜日の朝、社長のグラッサ・フォスター氏と5人の取締役(誰かは明らかにされていません)が辞任し、その旨証券取引所へ報告をした事を明らかにしました。

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経営審議会は今週金曜日に新しい取締役を選任するとしています。関係者によると後任人事は未だ流動的で、食品大手Perdigãoの元社長Nildemar Secches氏やヴァーレの社長Murilo Ferreira氏等の名前が上がっていると言われています。

 

グラッサ・フォスター氏が社長に留まっていた事で、今迄、汚職事件の捜査の手を逃れていた政治家達がいると思います。今回の辞任を機に今後、捜査の手が政治家に及ぶ可能性は十分に考えられます。次の社長が誰になるか未だ分かりませんが、汚職事件に加え、国際原油相場の下落の影響を受ける、ペトロブラスの、非常に難しい舵取りを迫られる事になると思います。

ムーディーズがペトロブラスを格下げ

格付け会社のムーディーズは木曜日、ペトロブラスに関するすべての格付けを格下げしました。汚職事件の影響が広範囲に及ぶことを懸念し、ここ4ヶ月で3回目の格下げとなっています。

 

ムーディーズによると、汚職事件に関する懸念と公表決算情報の不透明さを理由に、ペトロブラスの保証なし債務を“Baa2”から“Baa3”へ、ペトロブラスの個別信用リスクを“Ba1”から“Ba2”に夫々格下げしたと伝えています。また、更なる格下げ可能性についても精査していると述べています。

ペトロブラス2014年第3四半期決算

ペトロブラスは28日の明け方、発表が再三延期されていた昨年9月迄の第3四半期決算を未監査の状態で発表しました。市場の予想に反し、公表数値は現在進行中の汚職事件に関する評価損を見込んでいない数値となっています。

 

PWCから監査を受けておらず、債務返済に斯かるコベナンツ条項を回避する為に発表されたと揶揄される資料ですが、中身をみると、ペトロブラス帰属の純利益は30.87億レアルとなり、石油生産が低調だったにも関わらず、前年比9.07%マイナスにとどまりました。

 

また、レベニューは13.7%プラスの883.8億レアルであった一方、コストは10.1%プラスに留まった為、粗利益は27%プラスの210.6億レアルとなっています。

 

経費項目では、販売管理費が50.4%上昇し43.1億レアル、その他経費は173.1%増の59.4億レアルとなっています。ペトロブラスの説明によると、PremiumⅠ及びPremiumⅡの石油リファイナリー撤退費用として、27.1億レアル計上した事がその他経費増の主因と説明しています。

 

さらに、希望退職者費用として24.5億レアル計上されているとともに、独立系発電所関連損失で20.9億レアル計上しています。レアル安の影響からか、為替差損益は9億7千2百レアルと4.7%マイナスとなっています。

ショッピングセンターの売上げが前年比10%増加

Abrasceの調べによると、昨年のショッピングセンターの売上げが1420億レアルに達し、前年比で10%プラスの結果となりました。昨年だけで24のショッピングセンターが新しくオープンしており、 月平均で4億人もの人が足を事になっているそうです。

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 やはりクリスマスシーズンの12月がもっとも盛況のようで、期間中のショッピングセンターの売上げ1位は携帯電話(26.83%)、2位は雑貨(15.71%)、3位がレジャー・エンターテイメント(17.06%)となっていたそうです(()内は全体に対する割合)。

 

ブラジルでは、キリスト教の影響もあると思いますが、日曜日は家族で過ごすというのが一般的で、サンパウロはそうでもないですが、地方では日曜日は全く商店が空いておらず、行くところといったらショッピングセンターしかないというのも影響しているのでしょう。週末ショッピングセンターに行くと、その盛況ぶりに驚くとともに、ブラジル人の日曜日は家でゆっくり家族と共に、という生活スタイルも徐々に変わってきていると感じます。

(但し、ショッピングセンターであっても日曜日は午後2時か3時頃からしかオープンしないというのはよく見かけます。)

 

サンパウロを含め地方中核都市では様々なランクのショッピングセンターがオープンしており、中には超高級ブランドのみを扱っているセンターもちらほら見られます。ブラジルは貧富の差が激しく、金持ちは日本とは比べ物にならないほどですので、そのようなセンターも需要はあるのでしょう。

S&Pがヴァーレを格下げ

格付け会社S&Pが資源メジャーヴァーレの格付けを“A-”から“BBB+”へ引き下げました。今後数年間の財務的リスクが増した為としています。見通しは引続き“安定的”です。

 

今回の格下げは、見通し鉄鉱石価格が2015年で65ドル/トン、2016年で70ドル/トンと低調に推移する予想を織り込んでいます。ヴァーレは引続き投資規模を引き上げる段階にある一方、鉄鉱石価格の下落はヴァーレのキャッシュフローを悪化させる要因になるとS&Pは伝えています(昨今の物流コストの低下やレアル安は若干キャッシュフローのプラスに働きます)。

 

価格下落により、ヴァーレの信用リスクは今年が最も高くなり、来年には少し改善し、2017年には2014年水準へ回復すると見られています。

 

ヴァーレは今後数年の投資継続により2017〜2018年に生産量の拡大を見込んでいる為、 S&Pは引続きヴァーレの財務リスクを鉄鉱石価格、ヴァーレの持つ高品位鉄鉱石の割合の変化そしてオペレーションコストの削減からモニタリングしていくとしています。