ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

どうなるペトロブラス(1)

現在、ブラジル石油公社(以下「ペトロブラス」)がスキャンダルの嵐に見舞われ国際的な信用を落としています。

f:id:boaviagem:20141202093627p:plain

ペトロブラスは2000年に入り、一部民営化されましたが、2010年に780億ドルの増資を実施、一部ブラジル政府が引き受けることで現在もブラジル政府が議決権の過半数(50.3%)を占める準国営企業です。2010年と言うのはブラジル第二の都市リオデジャネイロ沖のサントス盆地のプレソルトで過去最大級クラスの海底油田リブラ地区が発見された年であり又、ウェストテキサスインターメディエート(WTI)も 平均1バレル当たり80ドル前後で推移しつつも尚上昇余地もあり、原油マーケットもリーマンショック以降の下落から立ち直りを見せている状況でした。

こうした中、政府による増資引受が将来の政府歳入を増加させる目論みであることが半ば明らかであり、今後政府によるペトロブラスへの経営関与がさらに強まるであろうことに加え、大規模増資による株の希薄化の影響の為、マーケットでは非常にネガティブに捉えられ、市場関係者にペトロブラスだけでなくブラジルという国の政治リスクを改めて印象づけました。

f:id:boaviagem:20141202093637p:plain

そんな準政府企業のペトロブラスにスキャンダルの風がより強く吹いたのは同じく政府がらみのイベントである大統領選挙前からでした。今年に限って言うと、まず注目すべきはペトロブラスによる米国パサデナ製油所の買収問題が上げられます。

パサデナ製油所はアメリカのテキサス州にある製油所で2006年にその50%を3億6千万ドルでペトロブラスが買収しました。問題となったのはその買収金額およびそのプロセスに誰が関与したか?ということでした。なぜなら、この製油所はペトロブラスに買収される1年前の2005年にベルギー資本のトレーディング会社であるアストラスオイル社が4千250万ドルで取得した物だったからです。すなわち、ペトロブラスは1年前にアストラスオイル社が4千250万ドルで購入した製油所の50%を3億6千万ドルで買収したことになるのです。そして、さらに驚くべきことに残り50%もペトロブラスが8億2千5万ドルという高額で引き取らなければならない契約も結んでいました、それも製油所施設の大半が老朽化しているにも関わらず、です。

つまり、ペトロブラスは老朽化した使い物にならない製油所を11億8千5万ドル支払い、取得した事になるのです。そしてその買収プロセスの中で当然ペトロブラスの経営審議会(日本で言う取締役会に相当するものです)に最終判断が委ねられるのですがその当時ペトロブラスの経営審議会議長を勤めており、買収に賛成したのが現ジルマ大統領だったのです(06年当時、ジルマ氏は官房長官という役職でした)。

f:id:boaviagem:20141202093641p:plain

結局この買収価格不当高額事件によって当時総裁であったガブリエリ総裁含む11名が今年有罪判決を受けました。しかしながら、経営審議会議長であったジルマ氏は経営審議会に当時提出されていた本取引に関する資料が不十分だったこともあり、責任追及も免れました。しかしながら、大統領選挙前に国民に非常にネガティブな印象を与えることとなってしまったのです。

 

ちなみに最初に記載したリブラ地区の開発権の入札が2013年に実施されており、ペトロブラス40%:トタール(仏)20%:シェル(蘭英)20%:中国石油天然気集団(中)10%:中国海洋石油(中)10%というコンソーシアム体制で開発が進められています。又、コンソーシアムは調査開発費控除後の利益、約42%をブラジル政府に支払う契約となっています。