ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

経済成長の減速?

今月28日にブラジル地理統計院(IBGE)から7〜9月期のブラジル GDPが発表され、結果は前年同期比マイナス0.2%、前期(4〜6月期)比プラス0.1%でした。日本経済新聞にも取り上げられており、「ブラジル景気、停滞続く」と題し、他BRICs諸国と比し景気回復の兆しが見えないとされています。

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一方で、ブラジルの経済誌Valor econômico(ブラジル版日本経済新聞の位置付け)やFinancial timesでは若干トーンが異なっており、ポジティブな印象で捉えられています。それは、7〜9月期 でわずかではありますがプラス成長であった為、テクニカル・リセッションを脱することができたことにあります。リセッションとは日本語で景気後退に当たり、国の実質GDPが2期連続マイナスになった状態を指します。2014年のブラジルの GDPは1〜3月期 が前期比マイナス0.2%、4〜6月期 が前期比マイナス0.6%であったため、テクニカル・リセッション入りをしていたのです(ちなみにブラジルでは1〜3月期 が1stクオーター、10〜12月が4thクオーターとなります。企業も12月末決算締めが多いです )。

 

実は今回のGDPのプラス成長は市場関係者にとって特段のサプラズではなく、同じくIBGEが今月17日に発表していたGDP成長率の先行指標である経済活動指数(IBC-Br)が9月期プラス0.4%、加え7、8月期もプラスでしたので、GDPに関してもある程度のプラスの数値が出てくるだろうと予想されていた為です(経済活動指数は日本では経済産業省が発表する全産業活動指数に相当します)。

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但し、今回リセッションを脱しましたが、引続き問題、課題が山積みであると感じます。10月末の大統領選挙に歴史的僅差で勝利したジルマ氏(社会民主党)は低所得者層への大規模な財政出動政策で成果を残してきた為、今後も引続き貧困層へ施策は継続される見込みです。一方で、経済界へのポジティブアクションは1期目同様に余り期待できないと市場では見られており、ジルマ氏再選直後はレアル安、株安が進行しました。また米国の金融緩和政策の終了を受け、ブラジルへの資金流入量の減少及び流出により更なるレアル安が進むことが懸念されています。さらに、連日ブラジルのメディアを賑わせているペトロブラスの汚職問題や従来からのブラジルコストの問題に対応して行かなければなりません。

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日本の7〜9月期のGDP成長率は前期比マイナス0.4%(年率マイナス1.6%)で、景気は回復基調であるが力強さに欠けるということで、政府は消費税の10%への引き上げ延期、解散、衆議院選挙と民意を問う形となりました。ブラジルにおいては、ジルマ大統領の第2期政権が始まったばかりですが、上記の通り課題を多く抱えながらの船出となっていると感じます。