ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

オデブレヒトとLOGZが河川輸送事業に参入

オデブレヒトグループ*1)はブラジルで収穫される穀物を輸出する為に北部地域の河川輸送事業に参入する計画があるとのことです。オデブレヒトが60%、LOGZが40%夫々出資して特別目的会社(SPC)を設立し、本事業を推進するようです。

*1)オデブレヒトグループはブラジル大手ゼネコンを傘下にもつ複合企業

 

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両者はSPCを通じて、先ず北部のTapajós河に、大豆、トウモロコシ、肥料等を積み出す為の プライベート河川港を建設するとのことです。加え将来的に Tocantins河に沿ったロジスティクス開発を進めることを検討しているそうです、但しこのTocantins河の途中には43kmにわたって鉱石エリアがあり、乾期に水位が下がると航行が困難になる等の課題があるとのことです。

 

オデブレヒトとしてはすでに河川輸送事業に参入しているHidrovias do Brasil社*2)を追いかけ本市場へ参入したいとの思惑があるようです。今回の発表に限らず、ブラジル北部地域の輸送網開発(特に穀物の)というのは昔からその必要性が指摘されていました。

 

*2) Hidrovias do Brasilは2010年に設立された河川輸送専門の会社、同社は2016年迄に500万トンの穀物が北部から輸出されると予想している

 

現在、ブラジルは米国と並び世界への穀物供給国としての立場を確立しており、未開拓適農地を考慮すると2020年には世界最大の穀物供給国となると言われています。そのブラジルで課題といわれているのが脆弱な穀物輸送インフラ網です。ブラジルに進出する企業にとって足枷となる課題を一般的に「ブラジル・コスト」と呼びますがロジスティクスインフラの未整備もその中に数えられています。このブログで今後も再三伝える事になると思いますが、現状ブラジルの穀物生産の中心地は、内陸部のマトグロッソ州、マトグロッソドスル州、ミナスジェライス州一体でありそのエリアで収穫された穀物はトラック及び一部鉄道にて南米最大の港であるサントス港まで輸送・集約されて輸出されます。しかし、大量輸送に必要な鉄道網が不足気味なため、トラックが輸送の主流となり収穫期にはサントス港にトラックの長蛇の列ができる事態が恒常化しており、南部地域の輸送インフラの拡大は急務とされています。

 

一方、上記記載した今後穀物生産が拡大すると言われている未開拓適農地は既存生産エリアの北部に位置し、ブラジル南部に位置しているサントス港へ輸送するには距離があり、時間・コストメリットがありません。そこで穀物輸出戦略の長期プランとしてブラジル北部エリアから穀物を輸出できるような鉄道網、道路網、港湾ターミナル整備に加え、今回の発表のような河川ロジスティクスの拡充が求められているのです。

 

今回の発表のようなブラジル企業だけでなく、欧米の穀物メジャーや最大需要家である中国企業も将来的に穀物生産が増大するであろうブラジル北部地域のインフラ開発に目を光らせていますが、現状は港湾資産などの一点買いが目立ちます。その理由としては先ほどブラジル・コストが関係していると思います。輸送インフラ網を整備するとなると、ブラジル各州にまたがって調整が必要となるのですが、各州によって税制や法制が異なるため、各省庁との調整に多大なエネルギーと時間を費やすことになってしまうのです(これは私自身ブラジルで開発関連の仕事をしているので身に染みて感じます)。もちろん、それだけがインフラ網未整備の理由でなく、環境対策への費用が他国と比べ割高なこと、従業員コストが割高なこと、原材料費が高騰していること等もブラジルのインフラ開発を語る上で良く言われるのですが、ブラジル政府・州の官僚的仕事スタイルに一つ一つ対応するのは本当に大変なのです。

 

そのため、多くの外資経済団体がブラジル政府側に要求しているように、ビジネス周辺に関する統一的な法改正がブラジルの開発を加速する為に必要なことだと言えます。