ブラジル日記

ブラジル経済の主要話題や各産業セクターの実情等、現地報道と体験に基づく考察。

インフレは押さえられるか?

ブラジル中央銀行の通貨政策委員会(COPOM)は政策誘導金利(Selic;ブラジルではベース金利と記載されます。以下「金利」と記載)を委員の全会一致で0.5%引き上げ、11.75%としました。

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今回の決定で金利は過去3年間で最も高いものとなり、インフレ抑制に向けて積極的な姿勢を市場に示した事になります。日本においては長期のデフレ期を経験しているので、インフレと言われても若干イメージが湧きづらいと思いますが、ブラジルで生活していると割と身近に物価上昇を意識する機会があります。ざっくりとしたイメージですが半年間生活していれば生活必需品や嗜好品の何かが1レアル前後(日本円で40〜50円)値上げされる状況に出くわすはずです。実際すべての商店でインフレの影響による値上げが行われているかは疑わしいところではありますが、1〜2レアル程度の値上げであっても月の最低賃金が700レアル前後(州によって最低賃金は異なります)のブラジルの貧困層にとっては状況が苦しくなることに疑いのないところです。

 

一方で、金利上昇によって一段と経済回復の足取りが遅れる事が懸念されており、ただでさえ中央銀行発表の2014年のGDP成長率は0.24%と低成長率に甘んじているにも関わらず、さらに下方修正される可能性さえ指摘されています。因に、2015年のGDP成長率は各社に様々予想されていますが、大方0.5〜1%に収斂している印象です。加え、下のFigureはEstadão紙作成のものですが、ブラジルの金利の高さは他の新興国と比べても際立っており(グラフはレアルベース)、世界経済から一人取り残される懸念も含んでいます。

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過去からブラジルはインフレに悩まされてきたのですが、中国経済に減速感がある中、中国へのコモディティ輸出で潤ってきたブラジル経済も大幅に落ちこんでおり、経済成長の実感を求める消費者対応を含めて、ブラジル中央銀行として大変難しい舵取りをせまられているのは間違いなさそうです。次回の通貨政策委員会は1月に予定されており、引続き市場に対しインフレ抑制に対して強気のメッセージを発するのか注目されています。